花器の素材は様々あります。陶器、磁器、鉄、プラスチック、木、そしてガラス。材質ごとに独特の質感と魅力がありますが、今回はガラスを取り上げてみます。
ガラス花器もまたその色、形はバリエーションが豊富ですが、共通するのはガラスならではの光沢とデリケートさでしょう。クリスタルカットガラスの眩さはもう宝石の域です!
そしてなんと言っても一番の特徴は"スケルトン"ということですね。中にはマットな色合いで透けないものもありますが、多くは花器の中を、そして更にはその奥をも透かして見せます。そこにいける面白さと難しさがある訳です。
花器の中の枝や茎をどう見せるのか。逆に全く見えないように工夫を凝らしいけるのか。他の材質の花器ならば見える部分、つまり「表」だけに気を配れば良い訳ですが、ガラスはそうはいきません。普段は隠して見せない「裏」の様子も見せるのですから、なかなかスリリングです。
敢えて花器の中を裏ではなく「表」として魅せる場合もあります。水中花のように花や葉を水の中に潜らせ、泳がせて、レンズ効果も加われば思いもよらぬ面白い作品になります。まさにスケルトンならではですね。
ガラス花器を扱う際には幾つか注意すべき点があります。
傷つきやすい素材なので、針金や剣山の使用は基本ご法度です。ギガンジウムのように色が出て水を汚す花材は控えた方が良いでしょう。水揚げに用いられるミョウバンも水を濁らせますから注意が必要です。
また、長く水を入れたままにすると水垢(カルキ)が取れなくなるので気をつけて下さい。(水垢はガラスに限ったことではありませんが、ガラスの場合は内側の汚れが丸見えになりますからね。) 汚れと言えば、百合の花粉はガラスをも染めて?しまうことがあります。油断なく。
「水」も見せる以上は作品の一部(素材)と捉えて、十分に神経を使う必要があります。汚れて濁ったり、ゴミが浮いていたりしないようにメンテナンスは怠りなく!
ガラスは表面がツルツルとしていて枝が思ったところにとまり難い上に、剣山や添え木などの細工が不向きとあって、いけるのに苦戦するかもしれません。扱いやすい花器とは言えませんが、臆せずおおらかにいけてみて下さい。夏も本番になれば、氷の彫刻のようなガラス花器にいけた作品は一段と映えて見えるはずです。