花をいけてみたら変わること

「華道」とかしこまらずに、ただ花をいける楽しさを皆さんと共有できれば嬉しいです

第11回 AT賞展 2024

先週、草月会館(青山)にてAT賞展が開催されました。

この家元のお名前を冠した"Akane Teshigahara = AT賞"とは、草月人にとっては特別なものです。年間を通して家元研究科で研鑽を積んだ者の中から、選考会を経て厳正に選出される賞であり、草月人が目標として目指すものの一つではないでしょうか。

その受賞者達による作品発表の場がこちらです。会期が2日間ではもったいないようなハイレベルの展示内容で、力作の数々に圧倒されます。

 

第11回 AT賞展が開催されます | いけばな草月流

 

第11回 AT賞展

会期:2024年3月15日・16日  10:00〜17:00

場所:草月会館1階 草月プラザ

 

A 覚知雅秀、B 東和霞
C 勅使河原明美、D 古川丹萠
E 吉澤星玲
F 渡辺祥夏、G 平塚恵春
H 田中秀萠、I 中村俊映
J 藤倉清佳、K 橋本佳蘭
L 平山菊洸、M 橋爪千峰
N 古家賀苑、O 森島志鳳

 



今回も E席の吉澤星玲先生の助手をさせて頂きました。制作にたっぷりと2日間がとられるほどの規模の企画ですから、とても良い経験になりました。貴重な機会を下さった吉澤先生には心から感謝です。出来上がった作品をただ拝見するのと、助手とは言え、制作に関わった上で拝見するのとでは、格段の違いがありますからね。

 

受賞者の皆様、本当にお疲れ様でした。そして、改めましてAT賞ご受賞おめでとうございます!

 

 

先週のお稽古: 10 Mar 2024

先週のS.I.さんのお稽古をご紹介します。

 

S.I.さん:桜、雪柳、金魚草

挿し口が2つ並んだ背の高い花器を使っての制作です。少しパールがかった光沢の褐色で、全体に横縞模様が刻まれています。

今回はそんな花器から発想を得て作品を構成するというのがお稽古のテーマでしたが、仕上がってみるとその考察は少し甘かったのかな?と感じます。

スリムな花器に対して桜を高く挿して、尚且つ横幅を抑えた構成はとても良かったと思います。また、アクセントとなるレモンイエローの金魚草の入れ方、雪柳の従枝としての使い方もバランス良く、上出来と言って良いでしょう。作品としては品の良い素敵な出来です。

ただ、「この花器の特徴はどのように作品に反映されているのかな?」というと、残念ながら伝わってくるものが弱いですね。

 

花器なり、花材なり、いける環境なり・・・、作品の核とすべき題材がある時は、制作に取りかかる前に、連想ゲームのように自分が直感的に感じた印象を書き出してみると良いでしょう。

例えば今回の花器ならば・・・、

・縦長の形

・褐色でザラザラとした土の質感

・派手さはないが、重量感あり

・拳で潰したような中央のくぼみが印象的

・横縞模様は波紋、地層、年輪を連想

質実剛健

・無骨だが温かみがある

と、思いつくことを並べてみます。次にこれらをヒントにして、作品の様子をイメージしていく訳です。

もちろん感覚は人それぞれですから、個人差があって構いません。自分の第一印象を信じて作品を組み立てましょう。

 

この手のお稽古は手だけでなく、頭もフル回転する作業になるので、スタミナが必要です、苦笑。

ともあれ、しっかりと入った良い作品ですよ。お疲れ様でした。

 

 

 

 

 

先週のお稽古:3、7 Mar 2024

先週はお二方がお稽古にいらっしゃいました。

 

まずはS.I.さんですが、線を重ねて面を構成する課題に挑戦なさいました。

今回使用したフトイはこのテーマにはうってつけの素材ですが、油断はいけません。一見どれも同じく真っ直ぐなように見えますが、じっくりと観察すると一本一本にクセがあり、当然ながら長さや太さにも個体差があります。それを見誤ると作品の出来上がりに歪みが生じますから、素材と良く語らいながらいけることが大切です。

長く伸びるフトイを並べて面とし、扇子のように先を少し広げることで開放感のある作品にしています。

 

S.I.さん:フトイ、チューリップ、レースフラワー

 

S.A.さんはアリストロメリアを中心に使い、華やかな作品に仕上げました。

アリストロメリアは一本の茎からスプレー状に花が広がる形状で、ボリュームを出したい時にはとても重宝する素材です。ただ、スプレー系の特徴として中心からほぼ同じ高さで花が咲くので、先端がラッパ状に広がり、やや軽やかさと風情に欠けます。

S.A.さんのように何本か根元から間引いて、花の位置に凹凸がでるよう組み直した方がバランスの良いケースもあります。

S.A.さん:キバデマリ、アリストロメリア、ドラセナ

 

お二人共に「花材の特徴を見極めて、作品に反映させる」勉強となりました。

 

 

 

先週のお稽古: 28 Feb 2023

3月に入りました。花屋さんではもう桜が本番とばかりに出回っていますが、3月弥生はやはり「桃」でしょう。食紅で色付けたお菓子のような花と、コロンとした蕾がなんとも愛らしい花木です。ただ、その枝ぶりは無表情で、はっきり言って退屈にさえ感じます。

そんな桃ですが、菜の花と合わせてS.E.さんとT.M.さんが投入のお稽古をされました。

 

まずはS.E.さんの作品から。桃のはつらつとした姿が綺麗ですね。

今回の花材は桃こそ花つきが良く立派でしたが、菜の花の方はかなり細身で、葉っぱ一枚も無駄にできないボリュームでしたから、さぞいけ難かったろうと思います。

普段ならば真のわき枝をもう少し整理するところですが、節句を祝う花なので、華やかさと勢いを優先して手をつけませんでした。

S.E.さん:桃、菜の花

 

続いてT.M.さんですが、こちらもご同様で少ない花材でのやりくりが大変でしたね。真に比べると副が弱々しいのがやはり気になるところですが、花材に恵まれなかったのですから致し方ありません。(こんな時は"真"と"控"のみで構成する第四応用花型をお勉強していただけば良かったですね・・・。)

それでも添え木留めの復習はしていただけたので、今回はそれを収穫としましょう。

雛祭りに相応しく、桃のピンクと菜の花の若草色がとても春らしい作品です。

T.M.さん:桃、菜の花

お二人とも難しい花材で良く頑張りました!

 

 

 

SYC東京1 企画展 「点々」

2月を締めくくるイベントとして、SYC(Sogetsu Young Challengers)東京1の企画展「点々」にお邪魔してきました。

今回はタイトル「点々」の通り、知る人ぞ知る「谷根千」にテンテンと存在する3会場をスタンプラリーで巡ろう!という企画です。

SYC東京1が開催されます | いけばな草月流

 

まずはツツジで有名な根津神社にほど近い「ギャラリー・マルヒ」から。元は質屋さんだったとかで、蔵のある古民家です。レトロな空間に若いメンバーの作品という、とんでもないジェネレーションギャップが、不思議な化学反応を起こしています。カッコいい!

 

続いて千駄木方向に進み、「Gallery KINGYO」へ。ポップな釣り作品と、両脇に置かれた黒いオブジェが目に飛び込んできます。このオブジェは金属素材の持つクールな質感を感じさせますが、実はその正体はストローなんだとか! 種明かしを聞いて脳内の重力センサーが大混乱、笑。えっ?重いの?軽いの??重くないの???

釣り作品で視線を上に誘導しつつ、足元には一見重量感のあるオブジェを置くという演出で、箱型のギャラリーが一層魅力的になりました。お見事です。

 

さらに「へび道」を千駄木まで進むと「White Gallery」です。3会場の中では一番"ギャラリーらしい"箱でしょうか。明るい室内に色鮮やかな作品が並び、とても好感が持てます。どれも個性溢れる素敵な作品で、私もパワー充電させていただきました。




お邪魔した日は生憎の小雨でしたが、傘をさしながらクネクネと曲がった細い路地を歩くのは、むしろ正しい「谷根千」の味わい方だったかも知れません。

素晴らしい企画、本当にお疲れ様でした。

(写真に収められなかった素敵な作品もたくさんあるのですが、今回はごめんなさい・・・!)

 

先週のお稽古:23、24 Feb 2024

2年がかりで準備した支部展が終わり、心身ともに張り詰めていたものが一気に解き放たれ、充電が完全にゼロに。持ち帰った花材やら工具やらで、家中が足の踏み場のない有様でも片付ける元気はもはやなく、「見なかったことに・・・」という自己暗示が解けるまでに10日かかりました。本当は1ヶ月でも2ヶ月でも、そんなゴミ屋敷でやり過ごす自信があったのですが(苦笑)、生徒さんがお稽古にいらっしゃる!ということで、否応なく現実世界に引き戻された次第です。

 

・・・と長い前置き(グチ?)です、失礼。

さて、いらして下さった救世主のS.I.さんですが、今回は1日2レッスンの欲張りコースです。

支部展で使用した雑木の類が色々と揃っていたので、これを利用して木の構成をお稽古して頂きました。なかなか面白い造形作品になりましたよ。

S.I.さん:イブキ、コデマリ、菜の花

もう一作は剣山なしです。2作品とも剣山という道具を使わずに作品を立ち上げ、自立させるテクニックが求められる訳ですが、重心を感知するセンスや要所を固定する技術の向上が期待できます。

桃、菜の花、コデマリ

良い機会なので"木"を素材として作品を制作する際に必要となる様々な工具の扱い方についても学んで頂きました。インパクトドリルのパワーには少々面食らわれたようですが、ワイヤー留めは随分と上達されたと思います。何事も経験!これからも頑張ってくださいね。

 

 

続いてはS.A.さんです。花材は満開のミモザと紫のストック、8分咲きの桜です。特にテーマは設けていませんが、この組み合わせならば "色" を無視しては作品が成り立ちませんね。

紫を作品中央に置き、黄色を左右に、ピンクを上に展開しています。紫と黄色の補色の対比と、紫から淡いピンクへのグラデーションという絶妙な色合わせで、とても素敵です。

S.A.さん:啓翁桜、ミモザアカシア、ストック

 

来月も花展やイベントが盛り沢山です。ゾンビと人間との間を行ったり来たりしながら、なんとか乗り切りたいと思います!

 

 

先週のお稽古:15 Feb 2024

T.Y.さんのお稽古の様子をご紹介します。

今回は枝もの2種を使って、"剣山なし"に初挑戦して頂きました。矯めのきくマンサクと、きかないコデマリの組み合わせですが、まずは幹のしっかりとしたマンサクで骨格を作り、後からコデマリを加えて肉付けをしていきます。

上手くまとまりましたね、上出来です!

T.Y.さん:マンサク、コデマリ

"剣山なし”のコツは、手を離した時にどちらの方向に傾くかを見極めながら作業を進めることです。重心がどこにあるのかを常に意識しながら、枝と枝の接点の位置を調整したり、重過ぎるところは余分を剪定して軽くする、矯めて力を分散させるなどしてバランスを取ります。花器の壁面の角を利用すると安定感が増してスッキリとした足元になります。

但し、バランスを重視する余り、均等に整い過ぎないように気をつけましょう。少しばかりスリリングな要素があった方が魅力的な作品になりますよ。

初めのうちは花材がしっかりと立ち上がれば合格です。慣れてきたら疎密をつけて表情豊かな作品を目指しましょう。一枝一枝組み上げる時の緊張感を楽しんでください。