先週のS.I.さんのお稽古をご紹介します。
挿し口が2つ並んだ背の高い花器を使っての制作です。少しパールがかった光沢の褐色で、全体に横縞模様が刻まれています。
今回はそんな花器から発想を得て作品を構成するというのがお稽古のテーマでしたが、仕上がってみるとその考察は少し甘かったのかな?と感じます。
スリムな花器に対して桜を高く挿して、尚且つ横幅を抑えた構成はとても良かったと思います。また、アクセントとなるレモンイエローの金魚草の入れ方、雪柳の従枝としての使い方もバランス良く、上出来と言って良いでしょう。作品としては品の良い素敵な出来です。
ただ、「この花器の特徴はどのように作品に反映されているのかな?」というと、残念ながら伝わってくるものが弱いですね。
花器なり、花材なり、いける環境なり・・・、作品の核とすべき題材がある時は、制作に取りかかる前に、連想ゲームのように自分が直感的に感じた印象を書き出してみると良いでしょう。
例えば今回の花器ならば・・・、
・縦長の形
・褐色でザラザラとした土の質感
・派手さはないが、重量感あり
・拳で潰したような中央のくぼみが印象的
・横縞模様は波紋、地層、年輪を連想
・質実剛健
・無骨だが温かみがある
と、思いつくことを並べてみます。次にこれらをヒントにして、作品の様子をイメージしていく訳です。
もちろん感覚は人それぞれですから、個人差があって構いません。自分の第一印象を信じて作品を組み立てましょう。
この手のお稽古は手だけでなく、頭もフル回転する作業になるので、スタミナが必要です、苦笑。
ともあれ、しっかりと入った良い作品ですよ。お疲れ様でした。